『医療と治験』
国立病院機構弘前病院 (臨床研究部長)
泉井 亮
治験は言うまでもなく、
治療を目的とした臨床試験
であり、特に新薬の開発に
当たって実施される。新し
い薬を、対象とする疾患に
罹っている患者さんに試し
てもらい、その効果や副作
用を観察する。多くの患者
さんからのデータを集め、
解析して、効果を検証し、
そして適切な使用量を決定
する。したがって、患者さ
ん一人ひとりから得られる
データは極めて貴重であり、
十分に信頼に足るものでなければならない。これゆえ
に、治験を行う医療機関には高い資質、すなわち高い医療レベルと患者さんの視点で医療を考えることのできる高い倫理性が要求される。
治験を進める上でもう一つ重要なことは患者さんの気持ちである。治験が終了し、その結果新薬が治療に使えることになれば、その疾患で苦しむ患者さんにはこの上ない朗報となる。しかし通常、新薬の開発には、動物実験など治験に至るまでの期間が長く、そして治験の期間も決して短期間ではないため、長い年月を要する。そのため、治験に参加してデータの提供に寄与した患者さんでも、自分が関わって生まれた新薬の恩恵に浴せないことも少なくない。しかし患者さんは、同じ病で苦しむ次の人に有効な薬として使われればよい、という気持ちで、病院を信頼し、治験に参加してくれる。このやさしい気持ちである。そして今、先人たちが治験に協力してくれた“おかげ”で我々はこれまでより進んだ治療を受けられる。この「世代のたすきリレー」がこれからも医療を支えていく。
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